「オムライス専門店を開くなんて、ちょっと変わった選択ですよね」と言われることが、今でもあります。
実は、昼のオムライス専門業態(屋号:リトルヤミー清水店)を始める前、私は長年フレンチ一筋でやってきた料理人でした。業界歴28年のうち、最初の14年はフランス料理の技術を磨くことだけを考えていた。だから「オムライス」という言葉を看板に掲げる日が来るとは、正直、自分でも想像していませんでした。
ところが、蓋を開けてみると——この選択が、シャンティというお店の根っこを、もっと深く、もっと太くしてくれた。今日はそのことを、少し長めにお話しさせてください。開業前に思い描いていたことと、14年間営業してわかった「現実」を、正直に書きます。
こんな方におすすめ
- ✅ 清水区でランチに本格的な洋食を食べたい方
- ✅ 子連れでも気兼ねなく入れるオムライムの店を探している方
- ✅ 「地元の食材を使った料理」に興味がある方
- ✅ テイクアウトで本格オムライスを楽しみたい方
- ✅ シャンティのランチ営業がどんなお店か知りたい方

開業前に思い描いていたこと——「フレンチ一本でいく」はずだった
2012年7月、静岡県静岡市清水区西高町に「ワイン食堂シャンティ」を開いたとき、私の頭の中にあったのはディナー一本勝負でした。富士山岡村牛を赤ワインで4時間かけてとろとろに煮込む料理、TEA豚(お茶豚)を使ったハンバーグ、契約農家から仕入れた野菜を主役に据えたビストロコース——それが私の「本業」であり、それだけに集中したかった。
昼は休む。料理に専念する。そのシンプルな形を思い描いていました。
ところが、開業して数年が経ったころ、ある変化が起き始めました。昼間に店の前を通る近所の方から「お昼もやってないの?」という声をいただくようになったのです。西高町という住宅街の中にある立地柄、ランチを探して歩いている方が意外に多い。ファミレスではない、でも敷居も高くない、「本格的だけど気軽に入れる」お昼の選択肢が、清水区には少ない——そんな声が積み重なっていきました。
その声を受けて、ランチ業態として立ち上げたのが「ふわとろオムライス」でした。カレー、ハヤシ、クリーム、トマト、カルボナーラなど複数のソースを用意し、それぞれ丁寧に仕込む。フレンチの技術を惜しみなく使いながら、価格帯は1,000〜1,999円に設定しました。
開業後にわかった現実①——「体に残らない食事」を求めている人がこんなに多い
オムライスを始めて驚いたのは、昼にいらっしゃるお客様の「本音」でした。
「ここに来ると、次の日体の調子がいいんだよね」
ランチのお客様にそう言っていただいたとき、正直、ハッとしました。私はオムライスを「美味しいかどうか」という軸で考えていた。でも、お客様が求めていたのは「食べた後に体が軽い」という感覚だったのです。
契約農家の野菜をたっぷり添えること、卵はできる限り質の良いものを選ぶこと、ソースは添加物に頼らず手仕込みにすること——それらが積み重なって、体への優しさになる。改めて確認させてもらったような気持ちでした。
開業前の私は「フレンチの技術をランチに落とし込む」という発想でいました。でも現実に14年運営してわかったのは、「技術より先に、食材の誠実さが伝わる」ということです。富士山岡村牛もTEA豚も、地元との深いつながりがあるからこそ使える食材。その誠実さがオムライスのワンプレートにも宿る。そのことを、お客様が一番敏感に感じ取ってくれていました。
「ここで食べると、次の日体の調子がいいんだよね」
食べログ公式PRより(女性客)
開業後にわかった現実②——子連れのお客様が「本格的な洋食」を求めていた
もうひとつ、開業前には想定していなかった光景があります。
ランチタイムに、小さなお子さんを連れたお母さんが来てくださるようになったことです。ベビーカーを押しながら、「子供が食べられる本格的なオムライスってないかな」と探してシャンティにたどり着いてくれた方が、清水区にはこんなにいらっしゃるのかと、驚きました。
ファミレスは飽きた。でも高級店は子連れでは入りにくい。その「間」にある選択肢が、清水区にはほとんどない——そのことを、実際にお客様と話すなかで知りました。
今はベビーカーでのご入店も対応しており、お子様メニューもご用意しています。テイクアウトはLINEで24時間注文を受け付けているので、「お昼に時間が取れないけど家で食べたい」というご家庭にもご利用いただいています。Uber Eats・出前館にも出店しています。
開業前、私が思い描いていた「ランチのお客様像」は、もっと大人の、一人でふらっと来る方でした。でも現実は、三世代で来てくださる家族、子連れのお母さん、学校帰りの学生さんまで、実に幅広い。その多様さが、シャンティのランチを豊かにしてくれました。
✓ ここまでのポイント
- 開業前は「ディナーのフレンチ一本」を想定していたが、地域の声に応えてランチのオムライス業態を立ち上げた
- 「体に残らない食事」を求めるお客様が清水区に多く、地元食材の誠実さがその評価につながっている
- 子連れ・ファミリー層の「本格的な洋食ランチ」への需要が、開業後に初めて実感できた
開業後にわかった現実③——「隠れ家」は弱点ではなく、最大の強みだった
西高町の住宅街の中に店を構えたことは、当初「立地的な不利」として自分でも気にしていました。桜橋駅から徒歩10分、大通りから少し入った場所。「わかりにくい」と言われるかもしれない、と。
でも14年営業してわかりました。これは弱点ではありませんでした。
「住宅街を少し入ったところで、こんなところにお店があったんだ!といった印象。接客、味も満足度が高い」
食べログ口コミ(2024年11月)
「こんなところに」という発見の喜びが、お客様の記憶に残る。静岡駅前の有名店を「行き尽くした」と感じている方が、清水の住宅街の中の小さな店に来てくださる。そして「こんないい店があったんだ」と思ってくれる。その体験が、口コミや紹介につながっていく。
ランチのオムライスでも同じです。「ローカル番組でも数回紹介された」という口コミをいただくこともありますが、テレビで取り上げていただいた理由のひとつは、「住宅街にこんな本格的な店がある」という意外性だったと思っています。
店前に2〜4台の駐車スペースがあること(満車の際はスタッフがご案内します)も、清水区という車社会では重要でした。「駅から遠い=不便」ではなく、「車で来やすい=通いやすい」に変わる。この発見も、開業後に時間をかけて実感できたことです。
14年経って、変わらないことと、変わったこと
2012年の開業時から変わっていないことがあります。
「地元にある良い食材や自然に気づいてもらいたい」という気持ちです。富士山岡村牛、TEA豚、契約農家の野菜、清水市場直送の魚——この14年間でこれらの食材との関係を少しずつ深めてきました。私自身、畑でバジルやナスを育てています。土に触れる時間が、料理の感覚を整えてくれると感じているからです。
静岡新聞に毎月第一月曜日にレシピを連載しているのも、その延長線上にあります。レシピを公開することで「自分の手の内を明かしてどうするの」と言われることもありますが、私は食材のことや作り方を知ってもらうことで、お客様との関係がもっと豊かになると思っています。
一方、変わったことも正直に言います。開業前は「料理だけで勝負できる」と思っていました。でも現実は、料理と同じくらい「関係性」が大切だとわかりました。LINE公式アカウント、メルマガ、このブログ、Instagram——どれも「料理以外のこと」ですが、お客様との日常的なつながりを作るために欠かせないものになっています。
そして、2025年6月のブログで書いたことですが、経営が危うくなった時期がありました。そのとき、長年通ってくださっていたお客様が店を支えてくれた。その経験を経て、「関係性のある店でありたい」という思いはより強くなりました。クーポンで安くなる店より、名前と好みを覚えてもらえる店——そうありたいと、今も思っています。
まとめ——オムライスは「入り口」でした
清水のオムライス専門店を始めて、一番大きな発見は何だったかと聞かれたら、こう答えます。
「オムライスは、シャンティを知ってもらうための入り口だった」
昼にふわとろオムライスを食べてくださった方が、夜にディナーで来てくださる。岡村牛の赤ワインとろとろ煮込みを食べて、「こんな料理が清水にあったんだ」と知ってくださる。その流れが、14年かけてようやくできてきました。
開業前には描けなかった景色が、今ここにあります。
ランチのオムライスは月〜火・金〜日・祝日の11:30〜14:00、ディナーは17:30〜22:00に営業しています(水・木曜日は祝日も含め休業です)。テイクアウトはLINEで24時間ご注文いただけます。
はじめての方も、久しぶりの方も、ぜひ一度いらしてください。畑で育てたバジルを添えたオムライスで、お待ちしています。
ご予約・お問い合わせは、お電話・公式サイト・LINEからお気軽にどうぞ。

