なぜ私は清水でビストロという業態を14年続けているのか

あれこれ

結論から言うと、私がこの清水の地でビストロを14年続けられているのは、「地元の良いものを、ちゃんとお皿の上で表現できている」という実感があるからです。その実感が消えなければ、たぶんもう14年でも続けられると思っています。

こんにちは、ワイン食堂シャンティの店長・山田です。

2012年7月に清水区西高町で開業してから、気づけば14年が経ちました。飲食業界に身を置いて28年。正直に言えば、途中で何度か「もうやめようか」と思った瞬間もありました。でも今日も厨房に立っているのには、理由があります。

この記事では、私という人間が「なぜビストロという業態を選び、なぜ清水という場所で続けているのか」を、できるだけ包み隠さず書いてみようと思います。お店の宣伝というより、一人の料理人としての14年間の話です。

こんな方におすすめ

  • ✅ ワイン食堂シャンティやシェフ山田のことを深く知りたい方
  • ✅ 清水区で「顔が見えるお店」「ストーリーのある食」を求めている方
  • ✅ 地元の食材や生産者に関心のある方
  • ✅ お気に入りの店・通い続けられる店を探している方
  • ✅ 飲食店のあり方や料理人の仕事観に興味がある方
なぜ私は清水でビストロという業態を14年続けているのか | ワイン食堂シャンティ

「地元に気づいてほしい」という一心で始めた店でした

開業当時、私が強く感じていたのは「清水ってこんなにいい食材があるのに、なんでみんな気づいていないんだろう」という、少し悔しいような気持ちでした。

富士山の麓で育った岡村牛。清水のブランド豚であるTEA豚(お茶豚)。市場に毎朝並ぶ清水港直送の魚。由比の桜えび。そして、地元の農家さんが手間をかけて作った野菜たち。これだけの素材が揃っているのに、それをちゃんと料理として昇華する場所が、私の目には少なく映っていました。

フランスのビストロという業態を選んだのも、実はそこに理由があります。高級フレンチでも大衆洋食でもなく、「ビストロ」というのは本来、生産者と食卓を直接つなぐ場所です。素材の個性を尊重しながら、難しすぎず、しかし手を抜かない。パリの路地裏にある小さなビストロが、その街の食材の豊かさをさりげなく体現しているように、清水の食材でそれをやってみたかったんです。

店名「シャンティ」はサンスクリット語で「平和・安らぎ」を意味します。食べている間だけでなく、食べ終わった後の時間も、体も気持ちも穏やかでいてほしい。そういう思いを込めた名前です。

14年かけて育ててきた「食材のネットワーク」という財産

「地元の良いものをお皿の上で」という言葉は、開業当初から変わっていません。でも、言うのは簡単で、実際に実現するには時間がかかりました。

農家さんとの信頼関係を作るのに、数年かかりました。牧場との契約を結ぶのにも、積み重ねが必要でした。市場の仲買人の方に顔を覚えてもらい、「今日はこれが良かったよ」と教えてもらえるようになるまで、地道に通い続けました。今では毎朝清水市場に足を運ぶのが日課になっています。

自分で畑を借りてバジルやナスを育て始めたのは、農家さんへのリスペクトと、「自分が使う食材のことを、少しでも生産者として理解したい」という思いからです。実際に育ててみると、天気の変化、虫の被害、収穫のタイミングの難しさ…毎回新鮮な発見があります。畑仕事は料理人としての私の見方を確実に変えてくれました。

岡村牛の赤ワインとろとろ煮込みが2年連続で金賞をいただいた料理も、この地域の食材のネットワークなしには生まれませんでした。富士山岡村牛のスネ肉を、良質な赤ワインで4時間かけてじっくり煮込む。シンプルな技法ですが、素材の質が全てを決める料理です。

✓ ここまでのポイント

  • 「地元の良い食材を料理で表現したい」という開業時の思いが、今も変わらない経営の軸になっている
  • 農家・牧場・市場との信頼関係は14年かけて少しずつ積み上げてきた財産であり、一朝一夕では真似できない強みになっている
  • 店名「シャンティ(平和・安らぎ)」という言葉通り、食後の体や気持ちまで穏やかにあってほしいという思いがすべてのメニューに宿っている

「次の日体の調子がいい」という言葉に、一番救われました

お客様からいただいた言葉の中で、今でも一番心に残っているのが「ここで食べると、次の日体の調子がいいんだよね」という一言です。

料理人として、「美味しかった」は当然の目標です。でも「翌日まで体の調子が良い」という評価は、全く別の次元の話です。食材の質、調理法、ポーションの設計、野菜の使い方…料理全体の設計思想が問われる言葉だと感じました。

「ここで食べると、次の日体の調子がいいんだよね」

食べログ公式PRに記載の女性客のお声

「住宅街を少し入ったところで、こんなところにお店があったんだ!といった印象。接客、味も満足度が高い」

食べログ口コミ(2024年11月)

40代・50代のお客様から「最近、胃もたれしやすくなってきて」「翌日に響かない食事を探していた」という声をよくいただくようになったのは、ここ数年のことです。正直に言えば、そういったお声が増えるほどに「シャンティがやっていることは間違いじゃない」と確信が持てるようになりました。

体に負担をかけない料理を作ること。それは「少量で安く済ませる」ことではなく、「質の良い素材を、体が喜ぶ調理法で、適切な量で提供する」ことだと思っています。契約農家の野菜を主役に据えたメニュー設計、自然派ワインの選定、少量多品目の「パリのお惣菜屋さんのサラダ」という形式。それらはすべて、翌日の体調まで考えた結果です。

閉店の危機があって、初めてわかったこと

2025年の春、私はブログに「じつは閉店寸前でした…」という記事を書きました。経営が本当に厳しくなった時期のことです。

あの時、私を支えてくれたのは数字でも補助金でもなく、お客様の言葉でした。LINE会員の方から「山田さんのご飯が食べたいから、絶対に続けてください」というメッセージが届いた時、正直泣きそうになりました。

飲食店は、最終的には「人と人」なのだと改めて実感した時間でした。私が14年かけて作ろうとしてきたのは、メニューの数やコース料金の高さではなく、「この人のご飯が食べたい」「この店に来ると落ち着く」という関係性の積み重ねだったのだと、あの危機があって初めてはっきりわかりました。

今もLINE公式アカウントやメルマガ、ブログ、Instagram(@shantiyamada)、YouTubeで発信を続けているのは、「お客様と日常的に繋がっていたい」という気持ちからです。月に一度のライブ演奏の夜に、遠方から来てくださるお客様がいます。「静岡新聞でレシピ見ましたよ」と話しかけてくれる方がいます。そういう積み重ねが、私にとって何よりの励みです。

これからの14年も、清水の食と人と生きていく

清水区は人口が減り続けています。地元の飲食店が厳しい時代であることは、私も当事者としてよく知っています。

それでも私は、ここでビストロを続けることに意味があると思っています。地元の農家さんが作った野菜を、地元のお客様にお届けする。地元のブランド牛をフランスの技法で煮込んで、隣に住む人に食べてもらう。それが続く限り、清水のどこかに「豊かな夜の食卓」が存在し続けることになる。そういう小さな確信が、私を厨房に引き止めています。

昼はふわとろオムライスを楽しみに来る親子連れ、夜は記念日のコースでゆっくりワインを飲む夫婦、仕事帰りにカウンターで一人グラスを傾ける方。年齢も目的も違うお客様が、同じ空間に集まっている。そのごちゃまぜ感が、私の好きな「清水のビストロ」の姿です。

14年続けてきて、料理の腕より先に身についたのは「地元を愛する気持ちの伝え方」かもしれない、と最近思います。その気持ちをお皿の上に乗せることが、私の仕事です。これからもそれは変わりません。

まとめ:清水で会いに来てください

「なぜビストロを14年続けているのか」という問いへの答えは、一言で言えば「地元の食と人に、まだまだ返しきれていないものがあるから」ということになるかもしれません。

開業時の「地元に気づいてほしい」という思い、農家さんや牧場との14年の関係、お客様からもらった「翌日体の調子がいい」という言葉、閉店危機を支えてくれたファンの声。それらが全部、今日の厨房の中に生きています。

静岡県清水区西高町の住宅街の中、桜橋駅から徒歩10分のところに、ひっそりと看板が出ています。初めての方は「こんなところに?」と思うかもしれません。でも一度来ていただければ、なぜここに店を続けているのか、料理を食べながら感じてもらえると思っています。

ご予約・ご来店、お気軽にどうぞ。事前にご相談いただければ、記念日のサプライズや、アレルギー・お食事のご希望にもできる限り対応いたします。皆さんのご来店をお待ちしています。

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